最初にお断りすると、
ビザに関する取り決めというのは毎年のように変更されるので専門家でないと追いきれません。またケースバイケースであり、はっきりと明言できないことが多いです。渡航間近の方はご自身で専門家に相談したり、渡航先の在日大使館の情報をフォローするようにしてください。
海外で成功を夢見る人にとって1番の障害になるもの、それが「ビザ」です。
私もみなさんの背中を押したいという思いでこのブログを書いていますが、現実を知らせなければいけません。
とはいかないんですね。
ビザとはそもそもどういうものか?
あなたが行きたい国から、この人はこの国に入って大丈夫ですよという証明書
です。
世界でボーダレス化が進んでいるのは間違いないんですが、国家単位でいろいろな制約がある現代ではまだまだ自由に住む場所を選ぶというのは難しいですよね。
そして人気のある国こそ、その制限が厳しいんです。
当然、誰でも受け入れていたら国のバランスが崩れてしまいますよね。
外国人が来て働く、移り住むことでその国の雇用や住む場所が確実に1つ奪われるからです。当たり前ですが、その国は自国民を最優先に考えています。
とは言いつつも
それでも、あなたがその国に利益を生み出せる人ならば別の話です。
分かりやすく言うと、
- 多大な税金を支払ってくれるビジネスを持っている人
- 世界中の人を魅了するスポーツのスター選手
その国の価値を高めてくれる人は大歓迎されるんですね。
これが原理原則です。
自国民がまず最優先、その国の価値を高めてくれる人は大歓迎される
要は、あなたがスキルを持っていたら、認知があったら、お金があったらビザは何の障害でもありません。
しかし、ほとんどの人は無いですよね。なので、ここからが本題です。
アメリカのビザについて
まずはアメリカの話しをします。
アメリカで就労ビザを取得することはかなり難しいです
なぜなら世界一の経済大国で多くの人が行きたい国だからです。
昔は不法滞在、不法労働が横行
数十年前は寿司職人はすぐにビザが取れたと言われる時代があったみたいです。
また観光ビザで入り不法滞在、不法労働から今はグリーンカードを持っているという年配の方もかなりいます。
しかし、時代は変わりました。
今は寿司職人というだけではビザはもらえません。
また不法滞在していることは新しくビザを申請する時点でバレることです。
もちろん就労ビザが発給されることは無い上、3~10年間の入国禁止、また短期滞在者用の電子ビザシステムのESTAを使って入国することが一生できなくなります。
寿司職人の就労ビザが取りにくくなった背景
主に2つの理由が考えられます。
- トラブルの増加
- 寿司の一般化
アメリカ国内でのトラブルの増加
1つは移民の生活困窮者による医療費の踏み倒しや保険未加入によるトラブル、犯罪行為などの治安の悪化により、そもそも移民に対するアメリカ人の目が厳しくなっています。
以前からあった問題ですが、国の経済が悪くなると真っ先に目を向けられるので、
アメリカ人の中でも富裕層と生活困窮者の二極化が進む近年においては寿司職人に限らず、移住者の選定にはよりシビアになってきていると思います。
これに関しては個人で対処できないので世相を追っていくしかないですね
寿司の一般化
もう1つは、寿司がアメリカで一般化してきた中で多くのキッチンワーカーが寿司に流れてきたことが挙げられます。
需要過多だったため寿司シェフの時給も高かったんですね。(今でも高いです)
現在では多くの寿司シェフが誕生しています。
そこでわざわざ日本から寿司職人を呼ぶ必要がありますか?
という話しになってしまっているんですね。
これに関しては対処できそうじゃないですか?
条件付きでチャンスはある
私の見解では、まだまだ需要はあると思っています。
しかし、優れた技術のある人という条件になってしまいますが。
寿司が一般化してきているからこそ本物が際立ってくるんですね。
なので本物を目指す必要があります。
修行する店選びの重要性
ここにどういった店で修行するべきかというヒントがあると思います。
ニューヨークやハワイ、LAなどの主要都市では
日本から親方クラスの人が日本の店を閉めて、
もしくは日本の店を信頼できる弟子に任せて自らが渡米するというケースも見受けられます。
そこまでのクラスではなくとも銀座でもカウンターに立てるレベルの人の渡米が、
以前に比べて増えてきていると思います。
それだけ寿司がワールドワイドで勝負できるコンテンツになってきているということです。
私も寿司で世界で勝負させてもらっている身として
早くに海外に渡り寿司を広めてきた先輩方には感謝しています
話しを本筋に戻します。
みなさんお察しの通り
まだここで諦めないでください。
最後まで読んでいただけたら希望を持てる内容にしてます。
私のビザの話しをします
私が渡米した2016年当時、私は寿司学校に1年通って銀座の高級店で2年数ヶ月修行したといったキャリアでした。
そこまで昔ではないですし、キャリアもすごくはないですよね。
「こはだ作れますか?」
アメリカ人の面接官に片言の日本語で聞かれ、「はい!」と元気に答えたことを今でもはっきり覚えています。
当時、無知な私はたまたま寿司好きの面接官に当たったのがラッキーだったのかなんて思ってました。
ここで私が何を言いたいかと言うと、
就労ビザにはいろいろな種類があるということです。
それによって取得の難易度も変わります。説明します。
寿司職人のビザの種類
E-2ビザ
私が当時取得したのはE-2ビザというものです。
別名、投資家ビザと言われています。
日本人がアメリカに会社を作り(過半数は日本人所有)、レストランを開業、投資金額が妥当で(ケースバイケース)、アメリカ人をどの割合で雇用するなどのもろもろの条件を満たしている場合に発給されるビザです。
投資家ビザと呼ばれるビザですが、投資家でなくてもここのレストランに勤務する人であれば対象になります。
難しい話しで申し訳ありませんができるだけ分かりやすく言うと、
日本からアメリカに出資してビジネスをやります。
アメリカに利益をもたらしますよといった感じだと、
その傘下としてビザが取りやすいんですね。
L-1ビザ
またL-1ビザというのも寿司職人が渡米する際によく使われるものです。
こちらは日本に母体があることが条件なので、駐在員としていく感覚に近いかと。
O-1ビザ
親方クラスの人が取るビザはO-1ビザであることが多いです。
アーティストビザとも呼ばれるんですが、芸術・科学・教育・ビジネス・スポーツなどの分野で卓越した能力を保持する人に適合されるビザです。
料理も「芸術」の分野に当てはまるので優れた寿司職人は取得することができます。
雑誌やメディアで高い評価を受けている、料理本出版の実績があるなど、能力を証明する客観的事実が必要ですが、Eビザなどに比べて自由度も高く、サポートとして日本から1人、ビザを出して呼べるという特典もあるのでこのビザが取れると大きいです。
もう一度言いますが、
就労できるビザにはいくつも種類があり、それぞれに難易度や特典が変わります
また同じキャリアでもこちらのレストランなら取れて、こっちでは却下ということもあるんです。
しかし、求人ではそのことは分かりませんよね?
誰よりも慎重に!!!自分の身は自分で守る精神で
ここでは私が見聞きした、ビザに関してのエピソードを紹介します。
嘘記事捏造、無理矢理ビザ申請
アメリカのレストランが,とりあえず日本から寿司職人呼びたいから
高い給料の求人を出して日本人を釣る。
日本資本じゃないし、日本に母体が無いからOビザで行こう!
でも職人の実績が足りないからグレーゾーンを攻める移民弁護士(ビザ専門の弁護士)
に頼んでウソの記事を捏造して無理矢理ビザを取らそうとしたというケースも
聞いたことがあります。
端からビザ申請する気がない
またビザ申請するという話しで(実際にはしない)とりあえずESTAで来させて、
数ヶ月の滞在中にレシピを盗んで、現地スタッフをトレーニングさせてクビに
したという話しもあるみたいです。
どちらも私の身近で起こった話しでは無いですが現実的に起こり得ることではあります。
ESTAを繰り返す
実際に私の周りでおきた話しで言うと就労ビザを出しますよ
という前提でそれまではESTAで90日間滞在を何度も繰り返して働かさられたというパターンです。
これはけっこうあるんですが、ESTAでの短期滞在を繰り返すとビザを申請する時にかなり印象が悪いと言われています。
面接官からしても不法労働の匂いがしますよね。
(もちろんやっていることは不法労働です)
またうっかり90日を1日でも過ぎてしまうとオーバーステイで不法滞在になってしまうので要注意です。
渡米するほとんどの人がビザに関して無知
渡米するほとんどの寿司職人がビザに関しては無知だと思います。
何がなんだか分からないですよね?
採用してもらうレストランの言いなりで進めるしかありません。
しかし、実は結構リスクを背負っているんですね。
- レストランはビザを発行している実績があるのか?
- レストランがお願いしている移民弁護士はしっかりとした実績のある人なのか?
ここまで気にする人はいませんよね?
私もそうでした。
ただ、気にした方がいいです。
もちろんレストラン側もお金と時間を使うので適当にやるということはないでしょう。
ただ、あなたはもっと真剣にならなければいけません。
一度ビザ申請が却下されるとその後、取得することが難しくなります
過去に却下した人を承認するということは、ある種、過去の判断を覆すということになるのでしっかりとした裏付けが必要になることが想像できるからです。
(いろいろな人に聞いた中での私個人の見解です)
またESTAの申請時にも過去にビザ申請を却下されたことがありますか?
という項目があります。却下履歴があるからダメということではないかもしれませんが、何かしら影響するとは考えるべきでしょう。
最悪、ESTAでもアメリカに今後入ることができなくなる可能性を秘めているということを覚悟しておく必要があると思います。
弁護士に助けられたニューヨーク時代
私がニューヨークで働いていた当時、違う店からヘッドハンティングを受けて移動しようとしたことがありました。
私のその時のビザはEで
新しい店ではOで申請を進めていました。
新しい店の首脳陣と弁護士事務所へ行ったんですね。
そこで話しを進めていく中で、そこのアメリカ人の弁護士さんが途中私に向かって、
その人のおかげで思いとどまりました。
その店の方々も理解ある人たちだったので却下された時のリスクを真剣に考えてくれてその話しはなかったことになりました。
リスクの先にチャンスがある
と私はいつも自分に言い聞かせてますが、
自分が対峙できないリスク(所謂、運を天にまかせる的なもの)は取らない
ようにしています。
まだまだ暗くなることを言ってすいません。
しかし、大事なことです。
一旦ここまでを整理します
- 寿司学校を卒業しただけではアメリカですぐに寿司職人として就職!は現実的ではない
- 就労できるビザにはいくつもの種類があり、難易度や特典は違う
- 悪いことを考える雇用主もいるので気をつける必要がある
私の知見からのアドバイス
じゃあどうすればいいの?
私の知見からのアドバイス
最短で寿司職人としてアメリカへ行きたい人は、
※これからアメリカへ展開します!は気をつけましょう。
意気込みだけで実現しない可能性もあります。
そうでなければ日本の高級店で数年(何年とは明言できません)修行してアメリカ出店している企業や店の応募にアンテナをはっておくことです。(私はこのパターンです)
高級店の仕事は専門的と思われているので、
ビザの取得に有利であるとともに、日本人として海外で勝負していくのに良い領域だと個人的に思っています
この場合E-2ビザがよりポピュラーな選択肢ですが、展開するビジネスの規模や投資額によっても取得率は変わり、申請者個人も会社も膨大な資料を用意しなければいけません。
そのため経験豊富な移民弁護士がついているか?
会社が抜け漏れなく正確な資料をきっちりと用意できるかということも大事です。
他のビザに比べ取りやすい分却下になることも多いので情報収集と目利きが重要です。
今は海外を志向する人が多いので倍率は高いですが、海外を目指す人が多いところに身を置くと情報も集まりやすいです。
情報と人脈が全てです
私が前の記事で言った、「寿司学校に行った方がいいですよ」に通じてくるんですが、実際に海外で就職した卒業生の体験談や評判を聞くことができるというのはすごいメリットです。
番外編として
アメリカで生活する方法を2つを紹介したいと思います。
- グリーンカードの抽選
- 国際結婚
グリーンカードの抽選に応募する
こちらもオススメです。
ニューヨークでは抽選でグリーンカードが当たったという日本人にけっこう出会いました。当たる倍率は低いですがやらないよりはいいですよね。
本気でアメリカで働きたい人は毎年応募しましょう
国際結婚
そして、国際結婚ですね。独身の人はこれはけっこう現実的かもしれません。
結婚する人がアメリカ人ならグリーンカードが申請できます。
偽装結婚をする人もたくさんいて純愛であっても疑われてしまうので、
本当に付き合っているという証拠の提出が必要になります。
情報収集に終わりなし
ビザ取得の難易度というのは世相や政権に左右されます。
近年は厳しい傾向ですが、将来的に緩くなったりする可能性は十分にあります。
毎年のように微調整されるので情報を集める習慣が大事です
ワーキングホリデーも選択肢にいれる
アメリカへの就職を前提として書いてきましたが、すぐにでも海外で働きたい人にオススメするのは
年齢制限はありますが、ワーホリでカナダやオーストラリアに行くという選択肢です。
(今さらワーホリを知らない人はワーキングホリデーでググってください)
経済レベルも高く、英語圏です。1-2年という制約はありますが、そこから発展する可能性もあります。
海外での働き方に慣れるという意味でもいい経験になると思います。
まとめ
ここまで長々と私の知っているビザの情報をアメリカを中心に書きました。
いかがでしょうか?
参考になれば幸いです。
寿司はワールドワイドです。
全世界に視野を広げた方がいいです。例えば次の2つです。
- アジア
- 中東
東アジア、東南アジア圏
東アジア、東南アジア圏は日本からも近く高級店から回転寿司業態など日本からも多くの店が出店していて比較的ビザも取りやすいと言われています。
特に東南アジア諸国は人口も多く経済も上がり調子です。
ドバイやサウジアラビア
また近年では中東のドバイやサウジアラビアに出店する高級店も話題になりました。
株式投資と似ていますね。
アメリカは固いですが、これから寿司が伸びていくであろう国に張ってパイオニアになるというのも楽しいしビックチャンスがあるかもしれませんね。
私はいつかアフリカで
ちなみに私はいつかアフリカで寿司屋を展開したいと思っています。
マーケットインではなく自分がやりたいというプロダクトアウトの意味合いが強いですが。
アフリカにこだわる私のルーツはこちらの記事に書いています
スキルが身につけばどこの国でも歓迎される下地ができてきているんですね。
寿司と先人達に感謝しています。
私たちは頑張ってスキルを磨きさえすればその道が開けるんです。
私の知らない寿司の世界もたくさんあります。
いろいろな国で働く寿司職人と交流して各国の寿司事情をみなさんにお伝えできたらいいなと思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。