先日、常連のお客様からの紹介でフロリダ北部にあるDestinという町で2日間のポップアップイベントをしてきました。
今回はケータリングやポップアップイベントに関してお金のことも交えてお話ししたいと思います。
またまた長文ですので2回に分けます。
(長すぎるという指摘をいろいろな人からしていただくのでなるべく短くするように気をつけているんですがついつい長くなってしまいます、毎回最後まで呼んでいただいている方に感謝してます)
前編の今回は、先日行ったポップアップイベントを深堀しつつ、その他イベントに関して私の考えをお伝えしたいと思っています。
後編では一般的なケータリングの事例を紹介しつつこれから挑戦する人たちにアドバイスできることを書きたいと思っています。
まず、
ケータリングとは?ポップアップイベントとは?
基本的にレストラン外へ出向き寿司を提供することをケータリングと呼びます。
個人からの依頼がメインですが、企業の社内イベント、ミュージックフェスティバルやスポーツイベントへの出店やそれらのイベントのVIPルームなど、様々な需要があります。
その中でポップアップイベントと定義できるものは、数日間からもう少し長期で出店し、 レストランに近いクオリティでサービスして売り上げとともに自分たちの認知を広めることにもフォーカスしたものです。
認知を広げるということは美味い料理を作ることと同じぐらい重要です。
シェフから独立して店を持った人の中には認知を広げるということに重きを置いていない人も多いですが、これがすごく大事です。
どれだけいいものを作っても知られていなかったら誰も来てくれません。
その点において最近はSNSが重要な役割を担っていますが、実食してもらい直に触れ合うことに勝るものはありません。
タダ乗りしてくる連中に注意です!!!
依頼の中には、「ここに出店させて宣伝してあげるんだから無料でやってね」というものも多いです。
私は、こういった依頼はやらないことにしています。
大局的にとらえたら利益を生む可能性もありますが、小さい組織である弊社にとってはどの活動からも利益を生む必要があると思っています。
開拓のための交渉力
また、実績の無いイベントに出店する時には交渉力も必要です。
どれくらいの集客があるのか読めないのに、相手の言いなりで大量に仕込んでしまって売れ残り、損をしたことがありました。
こういった場合には自分達が損をしないために相手の求める量を用意するなら売れ残った場合にはコストはカバーしてもらう、もしくは100人前、200人前などのオプションを提案して定額でやるなどのリスク管理が必要です。
その場合には多少のディスカウントは必要になると思います。
それでも大損する可能性をなるべく排除した方がいいです。
利益を生みながら認知を広めていく
ことが大事です。
今回のホップアップイベントは?
さて、今回のポップアップイベントとは?
概要は マイアミにあるハイエンドのモール(ブランドショップや高級レストランが入っている)がDestinというフロリダ北部にある町のハイシーズンに合わせて、
数ヶ月限定でポップアップしている中での寿司のポップアップイベントです。
イベントを企画してマーケティングもする会社が入っていてそこの責任者が私の店の常連さんと繋がっていて依頼がきました。
イベントの依頼は基本的に人づてなので良い人脈を持つ
ことが大事です。
- ディールは1日$5000
- 2daysなので$10,000
- 交通費として$600
16人のおまかせ($200相当)を2回転、2日分こなすことがミッションです。
集客は向こう側が担います。
仮に席が埋まらなかったり、キャンセルが出ても満額支払われます。
- サービススタッフやディッシュウォッシャーなどは運営側が手配
- 2人熟練の寿司職人がいれば大丈夫なボリュームです。
16人のおまかせ($200相当)を2回転、2日分こなすことがミッション
今回の報酬は交渉せず。
このディールは向こうからの言い値であり、一切交渉していません。
イベント会社なので、過去に何度もこの手のポップアップをしているので、これが彼らの行きついた数字だと思います。
おそらくアメリカで寿司職人を長くやられている人はあまりよくないディールだなと思う人が多いと思います。
私もそう思います。
利益は出るけど、労力に対して割に合わないなというのが本音です。
これが自分の現在地ということです。
相手にもっと利益をもたらせる人ならよりいい条件でのオファーが来ます。
謙虚に自分の現在地を受け入れて頑張るのみです。
(他者の評価を得るという意味でも大事な機会になりますね)
割に合わないなのにやる理由
こういうイベントをする時のマインドセットとして大事なのは、別の価値を見出すことです。
もちろん金銭的に損をしないことが大前提です。
私が見出した4つの価値
- 従業員に還元する
- 認知の拡大
- 気分転換
- 市場調査
いろいろなマーケットを知ることで将来ビジネスを展開していく時にも役立ちますし、ビジネスチャンスを知る機会になります。 利益を生むことに躍起になるとつまらない時間になります。
普段おまかせのコースを考える時にはフードコストとして30-35%を目安にしますが、遠方でのポップアップでは不手際があったりして足りなくなっても補填することができないのでかなり余分に魚などを持っていくことになります。
なのでフードコストも上がります。その分人件費を抑えてとか、安いホテルに泊まってとかをすると誰も楽しくないですよね。
私は旅行を兼ねて行きます。家族も連れて。
今回は片道11時間を車を運転して行きました。荷物も多くいろいろ心配だったので車にしました。
仕事ならしんどいですが、旅行なら楽しめます。
片道11時間はギリ車
にしても11時間てっ!て思う人が多いと思いますが、
アメリカだとこれくらいはギリ車で行く人も多いです。
ちなみに一緒に行ってくれた熟練の職人さん(従業員)は奥様も招待して飛行機で現場近くまで行ってもらい途中でピックアップしてます。
従業員に同じマインドを強いてはいけません。
イベントにフルコミットしながら、空き時間には観光もして地元のレストランに行きます。
イベントに関わる費用を引いた後の利益は全て従業員に還元します。
普通に店で働く額の倍以上にはした方がいいです。
自分はタダで旅行してお店のPR、市場調査もできたので十分と思えたら良い時間になると思います。
認知を増やせば、依頼も増加。
店を構えて認知を上げていくと、このようなポップアップイベント以外にも、イベントへの出店依頼はたくさん来るようになります。
人気店になるとコストをカバーした上で出店フィーも取りませんので、是非来てくださいと言われるようになります。
うちも過去に一回だけこのような依頼があり3日間のイベントで荒稼ぎしたことがあります。
しかし、そうなるまでには実績と認知が必要です。
イベントを企画する人たちというのは横のつながりで仕事をまわしているのでどんなイベントでも結果を残して良い評価を得る、信頼を得るということが大事です。
実際にはどんなところに出店するのか?
- 音楽フェス
- スポーツイベント
- 日本祭り
- フード&ワインフェス
基本的な出店費用として
- ベースの出店費用 $1000〜$2000
- キッチン、冷蔵庫、冷凍庫などの使用量 $500〜$1000
- その他 $100〜$200
ベースの出店費用はイベントの規模や認知によりますが
たとえば3日間で$1000〜$2000を、
まずこちらが運営元に支払わなければいけません。
その他Temporaly event のpermit や保険やらで$100〜$200くらいかかるイメージです。
微妙ですよね。。。
なんか微妙ですよね?
ほんとに売れるのか?
稼げるのか?
なので冒頭に言ったように、しっかりとリサーチして赤字を出さないように、従業員に十分に支払えるようにしなければいけません。
そのためにはすることは次の3つです。
- リサーチする
- 自分たちが損をしないように交渉する
- 自分達が弱い立場で交渉できないなら、そこのリスクは取らない
お金がかからないイベントもたくさんあります。
リスクの無いイベントから始めて経験を積みましょう。
最後まとめて終わります。
もう一度言いますが、
利益を生みながら認知を広めていく
ことが大事です。
今回は赤字だけど、宣伝できたから良しという考えは危険です。
トップは誰よりもお金を失わないことにフォーカスしなければいけないと思っています。
従業員に支払えなくなったら終わりです。
店が有名になってもお金がなくなれば店は存続できません。
今回はニッチな人にしか刺さらない話になってしまいましたが、
誰かの参考になれば幸いです。
続編の次回では、アメリカの寿司職人にとってより身近な個人からの依頼のケータリングに関して書きたいと思います。